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[プレスリリース]光るムギ類萎縮ウイルスをムギに感染させる技術を開発~少しの工夫がブレークスルーにつながった~
宇都宮大学農学部の西川尚志准教授、煉谷裕太朗助教、夏秋知英特命教授を中心とする植物病理学研究室は、ムギ類萎縮ウイルス( Japanese soil-borne wheat mosaic virus: JSBWMV)の感染性クローンをもとに、緑色蛍光タンパク質を発現するウイルスベクターをいくつか構築しましたが、これまでの報告と同様に、すべてオオムギに感染しませんでした。そこで、蛍光タンパク質の種類、ウイルスゲノムへの挿入部位、感染効率の良い接種法を検討した結果、蛍光タンパク質としてサンゴ由来のアザミグリーンが安定して維持され、また、ウイルスベクターをイネ科牧草(雑草)のジョンソングラスに接種し、その感染葉の汁液を用いるとオオムギに全身感染し、蛍光タンパク質を発現することが分かりました(図1)。ウイルスベクターをオオムギに直接接種したり、先行研究に倣ってベンサミアナタバコ経由で接種しても感染しない理由は未だ不明ですが、オオムギと同じ単子葉類のジョンソングラスに感染することでオオムギに感染可能な状態になると考えられます。これまで同属ウイルスの発現ベクターもオオムギやコムギへの全身感染に成功した例は世界中で全くありませんでしたが、本手法によりウイルスやムギ類の遺伝子解析が飛躍的に進むと期待できます。
本研究成果は、9月10日、国際学術誌「Journal of General Plant Pathology 」 のオンライン版に掲載されました。また、図1は、冊子のカバー写真として掲載される予定です。
(図1)オオムギに感染し、アザミグリーンを発現したウイルスベクター。
モザイク症状が見られる葉(左)に紫外線を当てると緑色蛍光が見られる(右)。
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<担当・問合せ先>
国立大学法人宇都宮大学
学術院 准教授 西川 尚志
TEL/FAX:028-649-5449
E-mail: nishigawa※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に置き換えてください)